米国経済の停滞、ギリシャの財政に起因するECの混乱、このような中でなぜこれほどの日本だけが円高になるのか良くわからないが、実態として、財政基盤が弱く経済活動も好調でない円が買われ空前の円高が続いている。輸出を中心とした日本の経済がこれで大損害を受けるのは良くわかるとしても、この状態があたかも将来共に続く既定の事実のように捉えられ、これからは日本での製造業は成り立たない、海外生産しか方法はない、と言う風潮がにわかに広まっているように感じている。この急激な円高に、短期的には対応することは難しいことは理解できるにしても、果たしてこの事態が続くのか、そして仮に続いたとしても、海外に出てどのくらいの成算があるのか、そのリスクは担保できているのかなど疑問が沸いて仕方がない。
そもそもなぜ円高なのか?日本が安全だから、円が安心できるから、というような良くわからない説明をされているようであるが、それにしても円高の程度があまりにも極端であるように思える。金額でどのくらい円が買われたのかは不明であるが、多分にこれは投資機会を求めているファンドの過剰な動きのせいではないかと思われる。
為替の問題は別にしても、海外投資の内容がしっかりと確保されているか疑問に思える。経費が安いからだけの移転では、為替の変動などごくわずかの変化で破綻をきたすと思うので、しっかりとした長期的視野にたった海外移転が望ましい。しかし中国に成長の陰りが見え、世界を引っ張ってきた米国、欧州も金融問題をはじめ難しい状況となっている。このような状況の中での安易な海外移転は、将来大きな悔いを残すのではないかと思われてならない。
短期的には、円高に伴う収支の悪化を、どうにかして合理化などで食い止め、日本の雇用を守ると共に、質の高い日本の製造業の特徴を十分に生かした、製品開発に磨きをかけるべきではないか、と強く思う。
|