特殊鋼の知識
制振材料
 振動や騒音の防止材料のニーズが高まってますが、振動を減衰する機能をもつ金属材料を制振合金あるいは防振合金と呼んでいます。
金属材料では昔から鋳鉄が振動吸収能力が高いことから、工作機械ベットやテーブルに使われています。鋳鉄の中でも球状黒鉛鋳鉄より片状黒鉛鋳鉄が制振性に優れることが知られています。
振動の吸収能力いわゆる減衰率、減衰能の高い制振合金はそのメカニズムにより、3つのタイプがあります。
(1) 転位型制振合金
 金属結晶の転位によるもので、Mg(マグネシウム)やMg-Zr(ジルコニウム)合金があります。これは高密度転位の運動が振動を吸収するためです。
(2) 双晶型制振合金
 Mn-Cu(マンガン-銅)系があります。これはマルテンサイト的変態で生成した双晶の運動による制振作用を利用したものです。形状記憶合金Ni-Ti(ニッケル-チタン)合金も双晶型制振合金として知られますが、加工性やコスト面からあまり使われていません。
(3) 強磁性型制振合金
 代表的合金は12%Cr-3%Alのサイレンタロイで、かっては市場で普及しました。これは振動エネルギーを磁壁(磁区の境界)で吸収する機構です。鋼種はフェライトステンレスに属しますが、SUS304(オーステナイト系)の約50倍の性能を持つといわれています。
 制振材料でも、合金単体でなく鋼板に樹脂などをサンドウィッチした複合型があり、洗濯機などの外装に使われます。
最近双晶型制振合金Mn-Cu系で双晶の量や大きさを支配する添加元素の研究から減衰能を向上した合金が開発されました。Mnベースで20%Cu-5%Ni-2%Fe(鉄)合金から2052合金として注目されています。この合金は成形性がよく、低炭素鋼なみの強さがあるため、構造材料として適用が広がっています。
思いがけないアイディアから創造性のある新製品が生まれるかも知れません。