特殊鋼の知識
形状記憶合金
 普通の鉄では変形させると元にもどらず、いわゆる塑性変形となります。形状記憶合金では形状回復温度以上に加熱すると元の形状にもどります。この合金は形状記憶超弾性の2つの性質があります。直線記憶したものの代表製品は携帯電話のアンテナです。大きく曲げても元にもどる超弾力性効果を利用したものです。このNi-Ti(ニッケル・チタン)合金は1960年頃に米国海軍省の材料研究所において発見され、ニチノールの名前で知られています。

 「なぜ元にもどるのか?」原理を簡単に説明します。これは金属組織の結晶構造の変化によるものです。高温域のオーステナイト組織を急冷するとマルテンサイト相に変態します。この相は外部からの力で簡単に変形させることが出来ます。この場合普通の金属は結晶のつながりがすべりを起こすため変形しますが、形状記憶合金の結晶はつながりを保ちながらすべりを起こさない変形マルテンサイト相の状態になります。これを加熱するとオーステナイト相に変わり、元の形状にもどるということです。

 超弾性現象は形状復帰温度より高い温度のオーステナイト相領域において外力を加えると、誘起マルテンサイト相に変態します。このマルテンサイト相は外力を取り除くと直ちに元のオーステナイト相にもどるため、塑性変形せずに弾性が得られます。

 Ni-Ti合金の化学組成は、Ni54〜56、Ti残wt..%の成分コントロールで、形状回復温度が設定されます。加工率(減面率)および形状記憶処理温度の因子でも特性が左右されます。用途はメガネフレーム、携帯電話アンテナ、ブラジャーが知られています。医療分野ではカテーテルガイドワイヤー、歯列矯正ワイヤーに利用されています。この合金は機能材料であり、用途はアイディア如何で大きな夢が開けると思います。チタン、ステンレスと比較した物理的性質を紹介します。