特殊鋼の知識
耐熱材料

 耐熱材料とは熱に強いと言うことで、高温になっても肌が荒れない、スケールがつかないなど表面が安定で、かつ高温になっても強さを維持できる材料をいいます。ステンレス鋼も表面が化学的に安定である共通点があります。ドライ(dry)環境の耐熱鋼に対し、ステンレス鋼はウェット(wet)環境ということになります。SUS304、316、310は耐熱鋼としても使用されます。高温強度的には高速度鋼(ハイス)も焼きもどし温度の550℃まで使用出来る耐熱材料です。 耐熱ベアリングとしてSKH51(Moハイス)がよく知られています。JIS鋼種はSUH記号で鋼棒17種類、鋼板で15種類あり、ステンレス鋼もSUS耐熱鋼として使用されています。耐熱鋼は組織的にステンレス鋼と同じく、オーステナイト系、フェライト系、マルテンサイト系があります。今回はオーストナイト系耐熱鋼についてお話しします。


オーステナイト系耐熱鋼
常温で強い材料は温度があがっても強いかというと、そうではありません。金属組織から観察すると結晶構造が体心立方格子(B.C.C)より面心立方格子(F.C.C)のオーステナイト組織が強くなります。これは原子が緻密に充填された結晶構造のためです。
耐熱材料では設計強度として、クリープ強さ(注)がポイントとなります。
一般に500℃以下でフェライト系、550℃以上ではオーステナイト系材料が使用されます。 

(注)クリープ強度(Creep):高温で強さをあらわす重要な性質で、一定温度で規定の負荷をかけた時に耐えられる強度をいう。例えば1,000時間に1%とか、0.1%の歪みを生じる応力、N/mm2(kgf/mm2)であらわす。

よく使われる耐熱鋼SUH310(25Cr-20Ni)は、オーストナイト系の代表的鋼種です。鋳造品の場合はCを0.4%に高めたAISI HK40が有名で、加熱炉や耐酸化部に多用されます。

 高合金系の代表材料にSUH660(A286)があります。 15Cr-25Ni-1.2Moに V,Ti,Al,など添加した折出硬化型の材料です。同類のSUH661は、一般にLCN-155のブランドで知られており、20Cr-20Ni-20CoにさらにMo,Nb,Nを添加した合金で、とくに高温強度、耐酸化性もすぐれています。タービンロータ、シャフト、アフターバーナーなどに使われます。