特殊鋼の知識
高速度工具鋼

 高速度鋼(通称 ハイス)は、ハイスピ−ドでカッテングができる刃物ということです。バイトの刃先は切削熱で600度Cぐらいまであがるため 刃先の硬度がこの温度で維持されなければなりません。ご存知用のようにハイスは550〜600度Cの高温で焼戻しします。このことは焼戻し温度が刃先温度より低い場合、硬度低下して使い物にならないということになります。

ハイスの基本成分は 18%W-4%Cr-1%V(18-4-1型)ですが 成分的にWタイプとMoタイプがあり、Moタイプの代表はSKH51(SKH9)でもっともよく使われるハイスです。MoとWは 親戚の元素でMo1%はW2%の効果があるため 成分は 6%W-5%Mo-2%Vです。Wハイスに比べ、ねばりがあり ショックに強いためバイトよりドリル、タップに多用されます。


 高速度鋼の熱処理は1200度C〜1300度Cの高温から焼き入れします、焼戻し(テンパ−)は高硬度目的の工具では200度Cぐらいが一般的ですが、 ハイスは550度〜600度Cの高温戻しを行います。これは550度C前後で 二次硬化という現象で 焼き入れたままより硬くなる特質があります。ここで二次硬化と繰り返し焼き戻しの関係を説明しますと、ハイスは W,Crなどの元素が多いため 一度にマルテンサイトにならず 一部のオ−ステナイトが残ります(残留オ−ステナイト)そのため一回目の焼戻しで残留オ−ステナイトをマルテンサイトに変態させること、さらに残留オ−ステナイトから炭化物を析出させることの操作があいまって硬さアップになるわけです。二回目の焼戻しは初回もどしで生じたマルテンサイトを焼戻しして安定化させます。

ハイスの焼戻しは ダブルテンパ−が必須条件となります。できれば二次硬化のストレスを除く意味から 三回のテンパ−が理想的です。また ハイスは熱に強いことから、テンパ−温度より低い温度環境では耐熱鋼としての用途があります。